数学カフェ

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第20回 数学カフェ 内容の予告

7月に実施予定の講演内容予告を致します!

今回は、東京大学大学院数理科学研究科 准教授 植田一石先生に、数学の諸分野への応用も豊富なトロピカル幾何学についてご講演していただきます。皆様ふるってご参加くださいませ。

タイトル:トロピカル幾何学入門

概要:

位相幾何学微分幾何学と比べた時の代数幾何学の特徴は、扱う対象 (代数多様体 (algebraic variety) と呼ばれます) が集合ではなく方程式系であることです。方程式系なので、環 (足し算と掛け算の定義されている集合) を与えるとその環における零点の集合が定まり、環を取り替えるごとにこの集合が変化します。これは代数幾何学を考える上で最も重要な視点の一つであり、「代数多様体は集合ではなく関手である」と述べられます。例えば、ある整数係数の代数方程式の有理数解にのみ興味がある場合でも、その方程式の実数や複素数{p} 進数や有限体における解の集合を調べることは、有理数解の集合を決定するためにしばしば役に立ちます。

実数の集合に形式的に無限大を付け加えた集合 {\mathbb{T} = \mathbb{R} \cup { \infty }} にトロピカル加法とトロピカル乗法を { a \oplus b = \min (a, b )} および { a \odot b = a + b } で定義したものをトロピカル半環 (tropical semiring) と呼びます。トロピカル乗法は ({\infty}以外では) 可逆ですが、トロピカル加法は非可逆なので、トロピカル除法は定義されますが、トロピカル減法は定義されないことに注意して下さい。トロピカル算法は可換であり、結合法則と分配法則を満たすので、減算を含まない有理関数はトロピカル化 (tropicalization) を持ちます。例えば、関数 { f(x,y) = \frac{x y}{x + y}} のトロピカル化は { f^{\mathrm{trop}}(x,y) = x + y - \min ( x, y )} になります。{f}{n} 変数の Laurent 多項式の時、そのトロピカル化 {f^\mathrm{trop}}{\mathbb{R}^n} 上の区分線形関数を定めますが、その関数が微分不可能な点のなす {\mathbb{R}^n} の部分集合を {f^{\mathrm{trop}}} の定めるトロピカル超曲面と呼びます。これはトロピカル半環における {f} の零点の集合の類似物であり、区分線形で扱い易いにも関わらず、{f} の定める代数多様体に関する本質的な情報を持っています。このようなトロピカル超曲面や、より一般のトロピカル多様体を扱う学問がトロピカル幾何学であり、トーリック多様体や凸幾何学、組合せ最適化などと直接の関係があるのみならず、付値 (valuation) を通して代数多様体の退化と深く関わり、実代数幾何学や数え上げ幾何学、ミラー対称性、完全可積分系、代数統計学などを始めとする様々な分野に応用を持ちます。今回は、この新しくかつ魅力的な分野への入門的な紹介を行います。

ご講演者:植田一石先生

東京大学大学院数理科学研究科准教授

HP: Kazushi Ueda

数学科へ進学される方へのアドバイスhttp://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~kazushi/misc/gsguide2013.pdf